【健診で受けたいオプション検査】ピロリ菌/ペプシノゲン

健康診断や人間ドックを受診した際に「ヘリコバクターピロリ抗体検査」や「ペプシノゲン検査」という胃の検査を耳にされた方は多いと思います。
でも、それぞれが何を調べる検査なのかご存知の方は少ないのではないでしょうか。
そこで、今回はヘリコバクターピロリ抗体検査とペプシノゲン検査の違いについてご紹介いたします。

ピロリ菌について

「ピロリ菌」という単語をご存知の方は多いと思いますが、念のためおさらいします。
ピロリ菌の正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。
胃の中は胃酸が出ているため、通常の菌は死んでしまいますが、ピロリ菌は特殊な酵素を持っており、アンモニアを発生して胃酸から身を守っているため、胃の中で生きることができます。
また、乳幼児期に感染し持続感染することが知られています。しかしながら成人になってから感染することも稀ながら報告されています。

日本人がかかっている胃がんの98%はピロリ菌感染によるものといわれており、ピロリ菌に感染すると数週から数か月でピロリ感染胃炎を発症しますが、症状がない場合もあります。この状態になると、日本人の場合は8割以上が萎縮性胃炎という胃酸の出ない状況に陥ります。
萎縮性胃炎にならず、ピロリ感染胃炎から直接発症する病気もあります。胃・十二指腸潰瘍胃MALTリンパ腫機能性胃腸症(FD=機能性ディスペプシア)胃ポリープ特発性血小板減少性紫斑病(ITP)といった病気です。女性に多い未分化型のスキルス胃がんもピロリ感染胃炎から生じるといわれています。

では、ヘリコバクターピロリ抗体(IgG抗体)検査とはどのような検査なのでしょうか? ヘリコバクターピロリ抗体(IgG抗体)検査とは、血液中の抗体を調べることで、過去や現在のヘリコバクターピロリ菌の感染状況を調べる検査です。
感度(陽性の患者を陽性と正しく判定する確率)は91~100%といわれています。

表 ヘリコバクターピロリ抗体の抗体価と判定

・抗体価が3.0未満の場合には陰性ですので経過観察してください。
・抗体価が3.0~9.9の場合、現在や過去の感染例が相当数含まれるので、胃がんリスクがないと判断しないでください。胃がんリスクを判定する場合は内視鏡検査などを、現感染を判定する場合は尿素呼気試験などを受けられることをお勧めします。
・抗体価が10以上の場合は、保険診療で内視鏡検査を実施し、除菌治療を受けられることをお勧めします。

ピロリ菌を除菌したい!

図 ヘリコバクターピロリ抗体価別のフロー 出典:MYメディカルクリニック

上記のように、ヘリコバクターピロリ抗体陽性(弱陽性)の方は、保険診療で内視鏡検査(+尿素呼気試験)を実施し、除菌を行います。除菌は3剤併用療法で1週間内服します。

内服後4~8週間後尿素呼気試験で除菌判定を行い、陰性の場合、除菌は完了しております。ただし、除菌後も胃がんのリスクはゼロではないので定期的な内視鏡検査での経過観察が必要です。

尿素呼気試験での除菌判定で陽性の場合は除菌失敗です。保険診療で別のお薬での2次除菌が可能ですので再度除菌療法を受けられることをお勧めします。

また、除菌完了後も抗体(戦った証)は残りますので、ピロリ菌除菌後はヘリコバクターピロリ抗体検査より尿素呼気試験などの抗原検査を受けられることを推奨します。
ちなみに、国内の成人においては、除菌治療成功後の再感染率は年間1%未満と報告されています。除菌成功後の再感染は極めて稀で、再感染が起こる場合でも除菌後1年以上経過してからです。

ペプシノゲン検査について

では、ペプシノゲン検査はどのような検査なのでしょうか。

ペプシノゲン検査は、血清中のペプシノゲン値を測定して、胃粘膜の萎縮の程度を調べます。PGⅠ値,PGⅠ/Ⅱ比を指標として胃がんに発展する可能性がある萎縮性胃炎の診断に役立つ検査です。

ペプシノゲンとは、たんぱく質の消化酵素の元になる物質で、血液中の量が減少すると胃粘膜の萎縮も強くなり萎縮が強いほど胃がんになりやすいといわれています。
基準値は、PGⅠが70.1ng/mL以上またはPGⅠ/Ⅱ比が3.1以上です。

厚生労働省三木班によると、陽性反応的中率(陽性者のうち胃がんが発見された率)は1.5%、長期観察でPG陽性者からの胃がん発生率は4.06%陰性者からの発生率は0.59%でPG陽性者の陰性者に対する相対危険度は6.9倍だったという報告もありました。

表 PGⅠ,Ⅱ別の異常値の場合に考えられる疾患

上図のように、PGⅠ、PGⅡいずれにおいても、高値の場合も低値の場合も疾患の可能性が考えられます。
異常値を示した場合には、内視鏡検査での精査を受けられることをお勧めします。

ABC検査について

では、胃がんリスク検査として、「ABC検査」という言葉も耳にされたことがある方は多いのではないでしょうか。

ABC検査というのは、はピロリ菌感染の有無を調べる検査(ヘリコバクターピロリ抗体検査)と胃炎の有無を調べる検査(ペプシノゲン検査)を組み合わせて、胃がんになりやすいかどうかを危険度別にA、B、C、D群に分類するものです。

図 ABC分類検査の分類

A群・・・・おおむね健康的な胃粘膜で、胃の病気になる危険性は低いと考えられます。逆流性食道炎などピロリ菌に関連しない病気に注意しましょう。未感染の可能性が高いですが、一部にはピロリ菌の感染や感染の既往がある方が含まれます。一度は内視鏡検査などの画像検査を受けることが理想的です。

B群・・・・少し弱った胃粘膜です。胃潰瘍・十二指腸潰瘍などに注意しましょう。胃がんのリスクもあります。内視鏡検査を受けましょう。ピロリ菌の除菌治療をお勧めします。

C群・・・・萎縮の進んだ弱った胃粘膜と考えられ、胃がんになりやすいタイプと考えられます。ピロリ菌の除菌治療と定期的な内視鏡検査をお勧めします。

D群・・・・萎縮が非常に進んだ胃粘膜と考えられます。胃がんなどの病気になるリスクがあります。ピロリ菌感染診断をお勧めします。かならず専門医療機関で内視鏡検査などの診断を受けてご相談ください。

※E群・・・・ヘリコバクターピロリ菌除菌後の方は、E群 (除菌群) として、定期的に内視鏡検査を受けることを推奨しています。除菌により胃がんになるリスクは低くなりますが、決してゼロになるわけではないので、内視鏡検査医による経過観察が必要です。

ヘリコバクターピロリ抗体検査とペプシノゲン検査の違いについて理解できましたでしょうか?
正しい知識を身につけ、定期的な健診を受けることで健康な生活を送りましょう!

ちなみに筆者はピロリ菌検査陰性でした!(笑)

【参考】
JCA日本癌学会
日本内科学会雑誌第106巻第1号/Helicobacter pylori除菌治療の現状と除菌治療後の諸問題/日本ヘリコバクター学会雑誌
日本消化器病学会
シスメックス株式会社
順天堂大学医学部附属病院順天堂医院
SRL

この記事を書いた人

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えあざむ

渋谷で働く25歳。美容と健康に興味あり!みなさまに正しい情報をお伝えするために日々情報収集しています。 胃痛持ちで内視鏡検査の常連。血液検査が苦手。医療脱毛の痛みは耐えられます!